木造 vs RC造:耐震基準と「減価償却」で見る物件選びの正解

建物知識・税金

日本で不動産投資をする際、避けて通れないのが「地震リスク」です。しかし、正しい知識があれば過度に恐れる必要はありません。物件の安全性を見極める「1981年の境界線」と、投資効率(節税)に直結する「建物の構造」について解説します。

最重要ポイント: 銀行融資を受けたいなら、原則として「1981年6月以降」に建築確認を受けた「新耐震基準」の物件を選んでください。

1. 運命の分かれ道「1981年」:新耐震 vs 旧耐震

日本の建築基準法は、大地震が起きるたびに改正されてきました。中でも最大の転換点が1981年(昭和56年)6月1日です。

基準名 建築確認日 安全性能(目安)
新耐震基準
(Shin-Taishin)
1981年6月1日以降 震度6〜7程度の地震でも倒壊しない
旧耐震基準
(Kyu-Taishin)
1981年5月31日以前 震度5程度では倒壊しない(大地震は想定外)

投資への影響:
旧耐震物件は価格が安い(高利回り)ですが、銀行が融資を拒否するケースが多く、地震保険料も高額になります。出口戦略(売却)も難しいため、初心者は避けるのが無難です。

2. 木造 vs RC造:メリットとデメリット

日本の住宅は主に「木造(Wood)」と「RC造(Reinforced Concrete)」に分かれます。

🌲 木造(Wood / Mokuzo)

  • 特徴: アパートや戸建てに多い。通気性が良く日本の気候に合う。
  • メリット: 建築費が安いため利回りが高くなりやすい。解体費用も安い。
  • デメリット: 防音性が低く、火災に弱い。シロアリ被害のリスクがある。

🏢 RC造(鉄筋コンクリート / Reinforced Concrete)

  • 特徴: マンションに多い。非常に頑丈。
  • メリット: 耐震性・耐火性・防音性に優れる。銀行の評価が高い。
  • デメリット: 建築費が高く、利回りは低めになりがち。解体費が非常に高い。

3. 税金テクニック:「減価償却」と耐用年数

不動産投資では、建物の価値が毎年減っていく分を経費として計上できます(減価償却)。これにより帳簿上の利益を減らし、税金を安くできます。構造によって、経費計上できる期間(法定耐用年数)が決まっています。

  • 木造: 22年(期間が短い=1年あたりの経費計上額が大きい)
  • RC造: 47年(期間が長い=1年あたりの経費計上額は小さい)

「築古木造(ちくふる・もくぞう)」の節税スキーム:
築22年を超えた木造物件は、最短4年で建物の価値を全額償却できます。短期間で巨額の経費を作れるため、高所得者の節税対策として人気があります。

⚠️ 注意: 減価償却による節税は「課税の繰り延べ」に過ぎません。売却時に簿価がゼロになっているため、売却益(譲渡所得税)が大きくなります。出口戦略まで計算に入れないと失敗します。
まとめ: 安全性(地震リスク)を最優先するなら「1981年以降のRC造マンション」が正解です。一方、利回りと節税効果を追求するなら「木造アパート」も選択肢に入ります。自分の投資スタイルに合わせて構造を選びましょう。